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2004.01.18

04・01・17 顧客離脱は「環境汚染」

質問1「顧客ロイヤルティの維持は経営にとってなぜ大切なのですか?」

よく耳にする答えはこうです。

「新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍であり、顧客維持の方が経済的だから」
私自身もかつてこういう説明をした記憶があります。

では、ちょっと突っ込みを入れてみましょう。

質問2「ではお聞きしますが、もしも新規顧客獲得コストの方が安い場合は顧客維持の施策はあまり重要ではなくなるのでしょうか?」

ちなみにそんな状況って現実にあるのかといえば、あるのです。たとえば、サービスや商品の品質が顧客の期待を下回った場合です。「期待して買ったのに、なんだこのサービスは!」というお客さんをなだめるのは手間もお金もかかることでしょう。とても小手先では無理です。そういうお客さんの相手をしているよりは新規顧客獲得の方が安上がりです。

で、1問目と同じ考え方に立って2問目に答えると

「顧客は新規獲得してどんどん使い捨てにする方が儲かる計算になるので、維持にお金を掛けるのは無駄」
という答えになります、よね?

でもここまでキッパリと割り切ると「でも、なんか変かな」と思うでしょう。そんな焼畑農業のようなことで本当に大丈夫なんだろうか?

もちろん大丈夫ではありません。

そもそもワントゥワンの基本的な理屈では、顧客を維持するかどうかの判断基準は、その顧客の生涯価値だったはずで、新規獲得コストとの比較ではないでしょう。

ということで、質問1に対するあの有名な回答は、じつはワントゥワンの本質から外れているような気がします。ああいう説明で納得を得たとしても、それは聞き手がワントゥワンの本質を理解したわけでもなんでもありません。

そこで私が言いたい質問1への新たな回答はこうです。

離脱客というのは廃棄ガスのようなもの。排出するほどに企業の成長環境が汚染されます。

あなたの身の回りの人々は、ある企業の現在顧客か、かつての顧客か(離脱客か)、それとも無関係の人の三つに分類できます。下のグラフは現在客の出現率を横軸に、また、離脱客の出現率を縦軸にプロットしています。顧客離脱は環境汚染
A社 現在客出現率40%、離脱客出現率10%で、現在客優位。
B社 現在客出現率も離脱客出現率もともに25%と拮抗しています。
C社 現在客出現率が10%、離脱客出現率40%で、離脱客優位です。

3社ともに現在客の出現率と離脱客の出現率とを合計すると50%と一定です。

さて、長いこと離脱客を垂れ流すと、かつてA社の位置にあった会社も、だんだん左上へと漂流し、やがてC社のようなポジションに行き着きます。こうなると石を投げると離脱客に当たってしまうような状況です。

もしも誰かが「こんどC社の商品を買おうかと検討しているんだけど」などと相談でもしようものなら「あんなの止めた方がいいぞ」という人の方が奨める人よりも沢山現れる。こうなると新規顧客が生まれにくくなり企業の成長性が阻害されます。

企業にとって離脱客を出すということは、まさに自分自身の成長に必要な環境を汚染しているということなのです。

だから質問1に改めて回答すると、

「既存顧客ロイヤルティの維持は離脱客を出さない施策であり、それこそが、企業の新規顧客獲得のためにも大切だからです」
と言えると思います。

ちょっと日頃の持論を書いてみました。

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コメント

あっ! C.I. Expressが……。

投稿: 和田昌樹 | 2004.01.18 02:03

このエントリを読む直前、Apple の .Mac のテクニカルサポート Discussion Boards を巡回していました。

そのせいもあって「あぁ、Apple の .Mac 関係者にこのエントリを読んで反省してもらいたいなぁ」と感じました。

投稿: OKAMURA | 2004.01.18 02:17

おもしろい見方ですね。マーケットの狭いビジネスなんかでは特にあてはまりますね。気をつけます:-)

投稿: abee | 2004.02.16 11:18

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