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2004.06.20

04・06・20 LAGQロサンジェルス・ギター・カルテット演奏会

19日の夜、オペラシティ・ホールでロサンジェルス・ギター・カルテット、略してLAGQ。1700人ぐらいのホールにざっと見て90%の入り。けっこうな人気者です。開演前からちょっと驚きました。
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Andrew York
2004・06・19 東京オペラシティ
Copyright 2004 Akira Kamakura


何年か前にトヨタのCMでギタリストの村治佳織が弾いて「日本的に」有名になった「サンバースト」。その作曲者アドリュー・ヨーク(Andrew York)がLAGQのメンバーでして、彼を見ておこうという気持ちが第一にありました。

ギター・カルテットという形への興味もあります。LAGQのCDを聴いても今ひとつピンと来ない。弦楽四重奏と違って同じ音域のギター四本でやるわけで、音楽的にどんなことになるのだろうか?

もう一つ理由があります。秋の大人の学芸会に備えてそろそろギターの練習を始めないといけません。その気分的キックオフ。

さて、ステージの上では左から、アンドリュー・ヨーク(Andrew York)、ジョン・ディアマン(John Dearman)、スコット・テナント(Scott Tennant)、ウィリアム・カネンガイザー(William Kanengiser) の順に並んでいて、右端のカネンガイザーがリーダーのようです。

四人ともソリストとしても立派に活躍しているようです。でも、こうしてカルテットを組んでいます。チケット料金は大きなホールの大多数の席がS席4000円。でも、四人で分けるんだから一人当たりで言えば1000円。安くはないけど高いとも言えないでしょう。

感想などを幾つかメモしておきましょう。

(1)レパートリーの魅力
ギターの名手がこの世の中に新たに4名増えたとしても、彈く曲が同じようなものばかりでは聴く側として特別嬉しいわけでもない。しかしカルテットとなると、レパートリーの幅が大きく広がる。一本のギターでは技術的に困難なものでも四本なら楽々可能になるということですね。

(2)音色の自由度
カルテットだと一本のギターが一つのメロディーを終始第5弦だけで彈くなんて編曲が可能になる。音色の連続性を尊重できる。低音弦でのハイポジションの演奏が非常に多い。12フレットよりさらに上も頻繁に使っています。

これは見ていて、なるほどと思いました。ソロでやる場合は他のパートの音も全部一人で引き受けるために、そうそうポジションの自由度があるわけじゃない。そういう制約から自由になっているんですね。

(3)小道具を色々使える
アンコールでチェット・アトキンスの曲をやりましたが、この時、カネンガイザーは小指にスチールギターで使うような金属のパイプをはめていましたが、それを途中で外して床に置きました。四人いるからそういう間をとることが許される。

(4)聴く方も音楽に集中できる
ギター屋がソロ演奏会を聴きに行くと、どうしても技巧に目が行ってしまいがち。肝心の音楽に集中できない。ところがカルテットになると、一人一人は凄いテクニシャンだと思うのだけど、音楽表現手段として素直に聴くことができるのですね。なんかホッとしました。

演奏する側も、技術を誇示する気持ちから自由になっているのではないかな。凄いテクニックも厭味にならない。

まあ、私が自分自身もう殆ど弾けないヨレヨレになっていることとも関係しているでしょうが。

(5)音量の幅が広がる
音量の自由度も大きくなります。これは当たり前ですけど、一人がピアノで彈くのから、四人がトゥッティでフォルテで彈くのまで幅ができる。

(6)掛け合いの魅力
チェット・アトキンスの"Blue Echo / Country Gentleman [Homage To Chet Atkins]"では四人の奏者が同じフレーズを微妙な時間差でリレーして行くことでまさにエコー効果を出します。フーン、こんなことが可能になるんだと感心させられました。とても魅力的でした。

(7)打楽器奏法が使いやすい
ギターの胴を叩いたりブリッジ近くを叩くタンボラなど打楽器的な効果が、一つのパートとして受け持つと考えると、自由に使えることになる。

(8)プリペアード・ギター
プログラムの後半最初のカネンガイザー作曲の「ゴンガン」はガムランを模したものです。解説には「ギターの弦にあらかじめ金属のクリップ、プラスティックの円板、ミュート、小さなベルなどを挟み込み、バリのガムランで使われる伝統的なゴングな鍵盤楽器などの音を模している」とあります。見たかぎり、四本とも細工をしていました。

聴いてビックリ!本当にガムランに聞こえます。

必ずしもカルテットだからとは言えないのですが、でも、ソロでやってもたぶん音楽にならないでしょう。

(9)パロディとしてのギター音楽
LAGQはオリジナル曲もありますが、編曲ものも多い。そこには六本の弦と二本の手と十本の指という制約ゆえにギターでは彈こうにも弾けなかった多くの曲にアプローチできる喜びがあるのですが、所詮ホンモノではない。極論するとパロディーです。

パロディーならばそこに批評精神を発揮すれば面白いものになって行く可能性があります。もともとギターはそういう側面をもった楽器だったような気もしますが、カルテットになったことで、その性格がより鮮明になって来たと感じました。

(10)パロディーがオリジナル曲に転換する可能性
前半のしめくくりはチャイコフスキーの組曲「くるみ割り人形」全曲。そもそも特別聴きたい曲というわけでもなかったのですが、しかし、聴いてみればギター・カルテット曲としてとても魅力的でした。原曲とは別の新しい魅力が生まれる、こういうこともあるなと思いました。

(11)ギターでアンサンブルを楽しむというスタイル
本当はこれが一番大事なことかなとも思うのですが、LAGQの活動によって、ギターという楽器のイメージが変化していると感じました。一人で爪弾く楽器からアンサンブルを楽しむ楽器へと印象が変わる。これは素晴らしいことです。

ギターと他の楽器の組み合わせは音量の違いでなかなか難しい。最近ではバイオリンと組んだセルシェルの"Schubert for Two"というCDがありますが、録音でごまかされている感じがしないでもありません。それにレパートリーは極めて限られてしまいます。

という具合にギタリストはアンサンブルという音楽の大きな楽しみから長らく疎外されて来たと思うのですが、カルテットは新しい楽しみ方の道しるべであり、LAGQはその道なき道を拓いて行くtrailblazerに見えます。

(12)エルゴプレイかな?
ライブってのはつまらないことに気がつくもので、スコット・テナントの巨体に目を奪われました。まさに巨漢。他の三人が痩身なのでことさら目立つ。その巨体ゆえでしょう、彼だけは足台を使わないのです。あの足を足台に乗せたら、台がいつグシャッと潰れるかと聴衆だって気が気でなくなるでしょう。彼は遠くから見たので確信はないけどこのエルゴプレイというのを使っていたのかな?

(13)サイン会の手間を惜しまないLAGQ
音楽的に高いレベルのことをやり、また、ギター音楽史的にも意義ある音楽活動を展開しているLAGQはそれだけでも立派だと思いましたが、当日、会場でCDを買った人にサインをしてくれるというのです。

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サインを待つ行列とLAGQ 2004・06・19 東京オペラシティ Copyright 2004 Akira Kamakura

演奏終了後、ロビーには、驚いたことに、ざっと見て200人は並んだのではないでしょうか。私も含めてです。すごい人気者です。こんなにサインするのも大変でしょう。でも、ニコニコとやっていました。
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LAGQのサイン 2004・06・19 東京オペラシティ Copyright 2004 Akira Kamakura

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