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2004.08.05

04・08・05 歴史をアートするAaron Kerner

今、夢の島の第五福竜丸展示館"Collapsing Histories"(崩れゆく歴史)というテーマでのアートの展示をやっています。そのプロデューサで、映像作家としての原点はゴジラ映画だというアーロン・カーナー(Aaron Kerner)さんご夫妻に中を案内してもらいました。
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第五福竜丸展示館
2004・08・04 江東区夢の島
Copycenter 2004 Akira Kamakura


ここはあの第五福竜丸がドンと置いてあります。ちょうど50年前のビキニ環礁の被爆事件の後この船は化粧直しされ練習船「はやぶさ丸」として使われていたとのこと。それがいつのまにかひっそりと、この「夢の島」に座礁したかのように捨てられていたのだそうです。歴史を粗大ゴミのように扱う気持が、時代のムードとして、高度成長期を迎えた日本の社会の中にあったということでしょう。その問題に気付いた人がいて、保存運動がおこり、展示館が出来た。約30年前のことです。

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第五福竜丸無線機
2004・08・04 江東区夢の島
Copycenter 2004 Akira Kamakura


建物の中に置かれた第五福竜丸は見上げるほどの巨大さです。その船体をぐるっと巡るように色々な作家の作品が展示されています。通信士だった久保山愛吉さんが使っていた無線機もありましたが、これは常設展示物でしょう。

カーナーさんの展示は、映画ゴジラの第一作目の日米比較の映像作品です。私の子供の頃の記憶はもう全くはっきりしませんが、日本版一作目には第五福竜丸の事件がかなり大きく扱われていたといいます。ところがカーナーさんが見た米国版ではそれがバッサリと削られていたというのです。

あの水爆実験は、会場のパネルの説明によれば、米軍の予想を裏切る三倍の威力が出てしまい、結果的に多くの予想外の放射能被害を出してしまった。東西対立が深刻化する中で軍事的重要性は高かったものの、多くのアメリカ人には、おそらく、あの実験のネガティブな側面を歴史の粗大ゴミとして捨ててしまいたいという気持ちがあったのでしょう。当時アメリカでは放射能の「死の灰」なんて洗い流せば安全で大したことないという「啓蒙」映画まで制作された。ゴジラの原作を都合よく編集したのも同じことだったのだろうと思います。

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ギャラリーエフcafeでのAaron Kernerさん
2004・07・15 台東区雷門
Copyright 2004 Akira Kamakura


記憶の中のある部分を無意識のうちに抑圧して無かったことにするという現象は人間にも社会にも当然あります。必ずしも病気とは言えないでしょう。そういう「記憶」によって歴史も人格も形作られて行かざるを得ない。

そこでアーティストとしては?その抑圧されていた部分をもう一度自由に甦らせるきっかけをデザインして、見る者がそれぞれの感性で歴史を発見する体験をさせる。フロイド流の精神分析(Freudian Psychoanalysis)での自由連想法(Free Association)にも似た手法、というと考え過ぎかな。ならば、赤塚不二夫流の「忘れようとして思い出せない」ことと向き合ってみるってことか? ま、私が理解した今回の展示の意図はそんなところでした。

教科書や歴史書の記述として歴史を理解するのではなく、アートを通じて疑似体験するという試みはなかなか面白いと思いました。そのためにはテーマとギャラリーの組合わせも重要で、この第五福竜丸の存在感は大きいですねぇ。

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ギャラリーエフの土蔵の展示写真の写真
(第五福竜丸展示館にて)
2004・08・04 江東区夢の島
Copycenter 2004 Akira Kamakura


"Collapsing Histories"は、もう一カ所、浅草のギャラリー・エフでもやっています。ここは東京の大空襲で焼け残った江戸時代の土蔵を改装してギャラリーに仕立てた場所です。展示物は異なりますが、歴史をアートするというコンセプトは同じです。

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夢の島マリーナ
2004・08・04 江東区夢の島
Copycenter 2004 Akira Kamakura


ところで、この「夢の島」という場所。東京という大都会のゴミ捨て場として出来た埋め立て地に「夢の島」とは、汚い現実を隠蔽する蓋のような、あまりにも臆面のない命名として、当時は誰もが皮肉な響きを感じたものです。

しかし、あれから何十年という歳月を経て、今の「夢の島」は緑豊かなホントウの「夢の島」になっていました。都心近くでこれだけの緑や水はなかなか見つからない。ここまで先を見通していたとしたら、このネーミングを考えた人は凄いもんだと思いました。

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» 04・08・08 「ゴジラとは何か」ピーター・ミュソッフ著 [またいらないモノ買っちゃったよ]
このあいだ見たアーロン・カーナーさんの日米ゴジラ映画比較の映像では、1954年の日本版がビキニ環礁の水爆実験を映している時に、1956年の米国版はアメリカ人の男... [続きを読む]

受信: 2004.08.08 18:58

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