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2004.08.08

04・08・08 「ゴジラとは何か」ピーター・ミュソッフ著

このあいだ見たアーロン・カーナーさんの日米ゴジラ映画比較の映像では、1954年の日本版がビキニ環礁の水爆実験を映している時に、1956年の米国版はアメリカ人の男が一人、少なくともビキニ環礁とは似ても似つかない状況の中に映っているだけ。米国として気に入らない部分をカットしちゃった、というのが私のとりあえずの理解だったので、なんだか不可解でした。

この週末、地元の図書館に寄った時に、ダメモトで映画関係の書棚をみると「ゴジラとは何か」という本があるではありませんか。著者はピーター・ミュソッフというアメリカ人です。カーナーさんがゴジラ映画を熱心に見ていたのは偶然じゃなかったようです。どうやらアメリカには熱烈なゴジラファンが沢山いて、その熱気の吹きこぼれのような形で評論やら映像作品やらも生まれているようなのです。

DSCF1379.JPGこの本によると、米国版の「怪獣王ゴジラ」"Godzilla, King of the Monsters!"は、テリー・モース"Terry O. Morse"という監督によって改変されているのですが、そのやり方が凄い。本多猪四郎監督の原作を20分ほど短くしただけでなく、その分、新たなシーンを撮影し追加してプロットを変更しているのです。狙いはこれをアメリカ製のB級SF映画もどきに作り替えることでした。

驚くべきは、ゴジラと核実験の関係がすっかり消されているだけでなく、追加された映像によって変更されたプロットもろとも人間の主役もアメリカ人に入れ替わってしまうのです。夢の島の映像で見たアメリカ人とは俳優レイモンド・バー "Raymond Burr"が演じる新聞記者だったのでした。彼は、のちにテレビの「ペリー・メイスン」「鬼警部アイアンサイド」シリーズでスターになった俳優とのこと。

20分相当の映像削除によって存在感がグッと弱まった俳優は主演男優の宝田明と山根博士を演じる志村喬など。ゴジラが水爆実験によって誕生したという肝心のストーリーも消滅。「繰り返される水素爆弾の実験が、ゴジラを甦らせたのだと私は確信しています」という博士の国会での発言シーンも当然削除。

その結果ミュソッフさんの記述を引用するとこうなってしまった。

本多版での山根博士は、ゴジラがなぜ被爆の歴史を持つ日本を選んでやってきたのかと考え、水爆実験にも生き延びられる、この怪獣の能力の秘密に深い興味を抱く。それに対し、モース版の山根博士は、単にゴジラがきわめて珍しい生物という理由で調べようとするのだ。

で、映画の最後のセリフは、本多版では

ゴジラはこれが最後の一匹だとは、とても信じられません。もし水爆実験が続けられるならば、ゴジラの仲間はまた現れるでありましょう。世界のどこかに。
となっているのに対して、モース版では
脅威は去った。全世界は目覚め、また生気を取り戻すだろう。

アメリカ版ゴジラの改変が政治的意図によるものだったとは到底考えられません。たんに当時のごくごく一般的なアメリカ人向けのB級娯楽映画として売れる作品にするための作業でしかなかった。それが今になって見ると、当時の日米関係やら核問題意識やらが、みごとに浮き彫りになっている。

それにしても、東宝は、かくも無残なまでに原作の意図を変えてまうような改変権をハリウッドに与えた、と解釈せざるを得ませんが、1954年の日本とは、そういう時代だったのでしょうかね。

ちなみに、Raymond Burrは今はRaymond Burr Vineyards というワイナリーを経営しているようです…というのはちょっと間違いで、彼は1992年に亡くなっていました。しかし友人と始めたワイナリーは今も健在のようです。

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