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2005.05.04

05・05・04 三島由紀夫生誕80年記念展

三島の展示をやっているというので神奈川近代文学館というところを初めて訪れました。

Mishima我ながら三島のことを思うのも久しぶりなのですが、このような三島展は1970年11月池袋東武百貨店、1979年1月新宿伊勢丹についで今回がようやく3回目だと解説にあります。70年に私が見た展示がいまだに数少ない一つであったことを知ってむしろ驚きました。時々未発表原稿やら書簡が発見されたと小さなニュースはあったものの「世間」はこの作家をどこか遠巻きに見ていたのでしょう。

この間、石原慎太郎「三島由紀夫の日蝕」(1991年)や徳岡孝夫「五衰の人 三島由紀夫私記」(1996年)も買い、それなりに納得して読んだ記憶があります。橋本治の「『三島由紀夫』とはなにものだったのか」は去年だったか?図書館で借りて拾い読みしただけですが、三島邸のアポロ像や洋風の階段が意外にちゃちだったという話だけが妙に印象に残っています。

「三島氏の死はあきらかにこの日本の社会に退屈をもたらした」と石原は「日蝕」の冒頭に書いています。当然意味合いは異なるにせよ、私もこの35年間ずっとそういう気持ちでした。

三島なら何と言っただろうか?同時代の作家とか批評家としてというより、明らかに並外れた知性と感性をそなえた精神が、政治だろうが世相だろうが芸術だろうが、あらゆる状況にどのように反応するのかという点に興味があった。それが聞けなくなった。そして三島に匹敵する批評家も出てこない。だから退屈しますよ。

学校のクラスにずば抜けてよく出来る生徒がいて、何かにつけて注目を集めていたという想い出は誰にもあるでしょう。三島という人は、いわば当時の日本全体が学校の一つのクラスであるかのような気分にさせた、クラス一番の学業の秀才であり芸術の天才であった、という印象があるのです。

あの凄絶な最後も今にして思うと、言葉足らずで申し訳ないが、演劇部の部活のようなものだったようにも感じられます。

三島は「太陽と鉄」で「ことばの腐食作用」ということを論じています。

本来人間は、わけもわからず現実というものに直面することで初めて世界を体験し、その後になって、経験を表現する言葉を思い知るものです。ところが早熟の三島の場合、幼少の頃から先に言葉で世界を理解してしまった。だから体験は言葉の追認でしかなく、無垢ではなくなる。これを言葉の腐食作用と呼んでいたのだと思うのです。

少なくとも当人はそう思ったし、確か、開高健が三島の作品が実体験の裏打ちの無い「ホンコンフラワー」で出来ていると批判したことがあったと記憶しています。

そこで三島は「太陽と鉄」の力を借りて肉体の言語を開発し、自決という人生一回きりの後戻りの出来ない体験をやって見せて、経験を重視する連中を茫然と置き去りにしたようにも見えるのですね。

理屈上はその結果、残されたホンコンフラワーに生命が宿った部分もあるでしょう。実際、今や誰もが、三島のすべての作品を、あの自決に収斂する運命の物語として読んでいるに違いありません。オセロゲームの最後の一枚を究極の急所に置くことで、それまでの全部の駒をひっくり返して去って行ったような感じがするのですよね。

ま、当人がある時期からそういう作戦を描いていたのでしょうから、我々の退屈を紛らわす知的アイドルとして生き長らえる可能性はそもそも無かったのでしょうね。

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受信: 2005.05.17 00:56

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