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2005.08.15

05・08・15 「価格破壊の裏に人権コストあり」NBCのDateline

podcastingのまねごとはしばらくお休みしておりますが、今はもっぱら聴く側に廻って、アメリカのラジオ放送ネットワークNPR(National Public Radio)のpodcast版を楽しんでいます。

なかでも先日聴いた"The Leonard Lopate Show"は刺激的でした。レナード・ロペートという人が様々なゲストとの遠慮のない会話を聴かせる番組で20年も続いているらしい。

8月3日のゲストは全国労働委員会のチャールズ・カーナガン(Charles Kernaghan)という活動家。テーマは「労働者の権利」(Workers rights)。

カーナガンは6月にNBCのDatelineというドキュメンタリーのシリーズで"Human cost behind bargain shopping"、訳すと「価格破壊の裏に人権コストあり」という番組を制作しており、podcastingではその取材裏話を紹介しています。残念ながらNBCの番組の動画はもう見られないようです。

アメリカの大手小売店に並ぶバングラティッシュ製のパンツの価格は13ドル。現地の縫い子の週給はたったの12ドル。それも自由にトイレにも行けないエアコンも無い奴隷的環境での週70時間労働で時給17セントにしかならない。NBCの映像には、縫い子がアメリカに招かれて自分が縫ったパンツの値札を見てショックを受けるシーンがあります。

時給17セントは現地では合法ではあるし、発注主のアメリカ企業が何か法を犯しているわけでもない。しかし、労働環境も生活環境もおよそ「人権」からほど遠いという現実があり、それを経営者は見て見ぬふりをしている。

恐らく、先進工業国の消費者で、奴隷的な労働力を是認する人はいないでしょう。しかし、その同じ消費者がより安い製品を求める。だから、企業のコストダウン努力は称賛されこそすれ、止めろと言う人はいない。

言うまでもなく、今日のグローバル企業は、ブランド価値を高めて価格を高く維持する一方で、発展途上国の安い労働力を使って製造コストをとことんカットするのが一つの基本戦略になっています。

安い外注先を探すことを命じられたビジネスマンが個人的な正義感から高い工場に発注することはできないし、やったとしても、その行為は結局徒労に終わるでしょう。当人がNaomi Kleinだったとしても難しいかも知れない。企業は競争に負けるわけには行かないし、株主だって迷惑である。企業が個人的な倫理感で行動することは非常に難しい。

話はとびますが、環境ISO14001ではグリーン調達といって、環境ISOに取り組んでいない企業とは取引をするなという運動があります。世界中の企業がネットワークを組むのでグリーン調達のプレッシャーはだんだん実効性を持つと予想されます。

podcastを聴くとカーナガンは法的強制力で何とかしようという考えを持っているようですが、人権ISOという方法もあるのではないかと思うのですね。人権ISOを取得するということは製品にその旨表示するだけでなく、人権ISOを取得していない工場を受発注関係のネットワークから外すのですね。

調べてみるとバングラティッシュの人口の88%はイスラム教スンニ派だとのこと。まさにイスラム過激原理主義とつながりやすい宗派ではありませんか。

思うに、アメリカの売り場を見て自分が奴隷だったことに気づいたバングラティッシュの縫い子は今は一人ですが、このインターネット時代にその認識は必ず広まるでしょう。その結末は工業先進国に対する激しい憎悪となり、テロ勢力と結びつく可能性もあるでしょう。

さて、会社を経営していると、労働法の改正などに応じて就業規則を修正する必要がけっこうあって、そのたびに厚労省がまめに日本の労働者の権利を保護し強化していることに気づかされます。

しかし企業活動がグローバル化したこの現代に、厚労省の有能な官僚が、世界的に見ても既にかなり高い水準の労働条件を得ている日本国内の労働者のことばかりを事細かに心配しているとしたら、なんだかその頭脳がモッタイナイ。

それどころか、もしもその国内労働力が海外で奴隷的労働力を調達する業務に従事していたとしたらコッケイでさえあるし、我が身に降りかかって来る国際テロを生み出す土壌に肥しをやっているような愚かな行為かも知れない。

podcastの中でもカーナガンはこうしたコッケイ現象を指摘しています。NFLのスター選手たちのロゴの付いたジャージが、ホンジュラスの時給19セントの奴隷的労働力で作られて、アメリカで75ドルという値段で売られている。そのロゴ使用料はNFLの選手組合に入るので、要するに選手たちのストライキ資金となっているというのです。貧困の中から這い上がって来た選手たちが、まさに自分達の故郷のような国の奴隷的労働力を利用して巨額な年俸を守る組合活動の資金を得ているという構図になる。

podcstの冒頭でホストのレナード・ロペートは「カーナガンさんはだいたい悪いニュースをお持ちになるのですが…」と皮肉まじりにこの過激な活動家を紹介するのが可笑しい。終始ホストは活動家と一定の距離を保ちながらインタヴューを続けますが、NBCのDatelineのプロジェクトとして、隠しカメラを仕込んだ眼鏡を掛けてバングラディッシュの工場を訪問し、投資家のフリをして工場見学を実現させ、不当労働行為を裏付ける証言を経営者と労働者の双方から取った執念に静かな感銘を受けていることは明らかでした。

こういう番組を聴けるpodcastは非常にありがたい。日本の民放局も、電波放送にこだわらずに、podcast用のドキュメンタリー番組の制作に取り組んでほしいものですね。

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コメント

鎌倉さん、こんにちは。
関です。最近Blogはじめました。また、いろいろ教えてください。
iMi会員になってとても永い時間が経ちましたが、あまり調査に貢献していません。

投稿: 関 幸一 | 2005.08.18 17:00

>日本の民放局も、電波放送にこだわらずに、podcast用のドキュメンタリー番組の制作に取り組んでほしいものですね。

免許なしに始められるわけで、別に放送局でなくてもいいでしょう。製作ノウハウなんかより企画の方が重要だと思うんで、放送局のアドバンテージって意外に少ない気もします。

投稿: pie | 2005.08.18 21:51

関さん、コメントありがとうございました。
というより、ご無沙汰です、かね。
blogなかなか熱心に書いておられますね。
私の場合、だんだんと生活の一部になって来た感じですね。これからもよろしく。

投稿: bee | 2005.08.18 23:16

pieさん、podcastの広がりの中で電波放送の価値は確実に下がりますね。決められた放送時間帯に付き合って聴取するお人好しはどんどん減るばかり。もうプライムタイムなんて概念は消滅するでしょう。
だからこそ、かつて志を抱いて放送局に入った放送ジャーナリストたちに、もう電波なんかあてにしないで、podcast用の優れた番組を制作してpodcastingしてほしいとおもうわけです。

投稿: bee | 2005.08.18 23:27

ごぶさたしております。
つい先日iTMSで21位まで上がりましたが、なかなか20位のボーダーラインを超えられずにいます。
一昨日、スウィング・ガールズの矢口監督が率いるバンド演奏を収録しました。ねらいは、おじさんたちのバンドブームの底流に何があるのかです。
これが、鎌倉さんの言うドキュメンタリー番組になるかどうか今ひとつ疑問ですが、今後もpodcast用のドキュメンタリー番組の制作には是非取り組みたいと思います。
それにしても、企画・制作・編集のすべてを一人でこなすのは結構大変で、苦労しております。

投稿: m_wada | 2005.08.29 09:24

おじさんバンドとか吹奏楽の世界なら、著作権問題を個別交渉でクリアできそうですね。音源として狙い目だと思います。
ドキュメンタリーpodcast、期待しております。基本は人物インタヴューじゃないかなと感じています。その時々の話題の人物からタップリ話を聴くのが面白いと思います。

投稿: bee | 2005.08.29 22:50

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