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2008.01.06

08・01・06 台北で漢字鑑賞旅行

DSCF2700昨年11月の連休に台北に行き「中文字譜」という漢英字源字典を買ってきた。ゴルフをやりに行ったのだが…。

台北の街に溢れる漢字がいたく新鮮に感じられたのだった。店の看板をジッと眺め、一つ一つの文字の日本での意味をもとに要するにこの店は何だと推論する。で、店の様子を観察して納得したりしなかったりする。漢字の姿形を珍しいもののように観察したのはたぶん幼稚園時代以来のことではないか?わからんが。

DSCF2681日本とは微妙に違う意味で使われている文字も多いし、英語の発音表記に当てる漢字にも意表を突かれる。淡水の名門ゴルフ場は「台灣高爾夫球場」と書く。どうしても野球場のイメージが重なってしまう。コニカの店舗の看板を眺めるとデジタルが「数位」らしいと想像がつく。サービスは「服務」で、なんだかいやいや提供する雰囲気がある。行きの飛行機内で観た映画ムーン・リバーは余りにもそのまんまの「月河」だった。

DSCF1333漢字マッサージで揉みほぐされた脳ミソは、最終日、飛行機の時間を気にしながら台北駅近くを歩いていた。たまたま古本屋の前を通り掛かった。入ろうか?中国語読めないから無駄じゃないか?でも見るだけ見たら?二度と来ないかも知れないのだから。自問自答のすえ入る。入口近くが辞書の棚だった。あまりゆっくりしていられない。買うならサッサと買えよ、という気持ちで背表紙をサーチ。目に飛び込んで来たのが「中文字譜 漢英字源字典」だった。"Chinese Characters, A Genealogy and Dictionary"という英語に安心感があった。

値段は400元だから約1600円。両替した元を使い残しても無駄だという気もあった。レジで金を払おうとしたら350元だという、というか、お釣りをくれたのだ。前日、土産物屋でカラスミを定価で買って来たら、同行者たちに、台北で値切らないのはアホだと馬鹿にされたのだが、そのことを思い出す前に店の方から値引いて来たのには驚いた。

帰路の飛行機の中でこの字典をパラパラと捲り始めた。自分の名前の「章」は?とみると、これは「音」と「十」の組み合わせだという。音(Music/sound)が十(completed)=完了する、だから楽章の意味になるとある。初めて聴く説明に驚いた。自分では特に根拠もなく「立」と「早」の組み合わせだとばかり思っていた。「鎌」はどうだ?と索引を探すがこれが見当たらない。何故だ?約3時間の飛行時間の大半をこの字典で遊んでいた。

この字典の著者はRick Harbaugh という今は米国インディアナ大学にいる経済学者である。国立台湾大学(National Taiwan University)で修士論文に取り組んでいる時に、退却神経症ではないだろうが、本来の研究からの"distraction"として1998年にできちゃったモノと断っているが、できが良すぎる。論文の方の出来か心配になるほどだ。しかも、印刷物以上に充実したネットサイトが今も維持されている。

さて、日本人なら漢字のことは白川静先生に最終的な結論を聞くべきだ。私の「章」はどうなんだと字統(普及版)を引いてみると流石である。白川説によると、後漢の許慎による「説文解字」に「章」=「音」+「十」で楽章だという説が書かれているが、当時、「章」に楽章の意味があったことから逆に発想して、そのような解釈が成立するように字形の解釈をするという過ちを犯したものと断じている。Harbaugh教授の字典は「説文解字」をそのまま引用しているだけだということがわかった。

そういえば「中文字譜」の前書きにはちゃんと「説文解字」準拠であるため、それ以前の時代の漢字の形である甲骨文などの情報は使っていないとの断り書きがある。

とはいえ「説文解字」は「字形学的な字書として唯一のものであり、その聖典とされる」と白川先生は書いているし、Harbaugh教授も西暦100年頃に成立したこの字書が"one of China's first and still most influential dictionaries"だとしている。この「中文字譜」は「説文解字」の世界に手軽に親しむのに絶好の字書だと思う。案外、日本には類書がありそうでないのかも知れない。

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