太平洋クラブ御殿場コースの16番ホールは401ヤードのパー4。
「ドッグレッグの角にある高い木が250ヤードです」とキャディが言う。
そんなにあるか?と一瞬思ったが、いつもと違ってバック・ティーからやっているので、そうかも知れない。確かに、急いで考えてみても、曲がり角のところにグリーンまで150ヤードの標識があることは何度もプレーしているのでわかっている。401ヤードから150ヤードを引けば残りは251ヤードだ。なるほど。
例によってベン・ホーガンの教えに忠実に右手フィンガー・グリップを確認し、ワッグルを2-3回やってヘッドの軌道を確認し、スウィングした。
ドライバーは、めずらしくダフリもせずトップもせず、ほぼ芯に当たった。球は軽いドローの軌道を描いてフェアウェイ中央に飛んで行った。あとちょっとで奥のバンカーに突っ込みそうに見えた。
余りにもいい感じだったので、飛距離を歩測してみると、木から28ヤードあった。ということは250+28で278ヤード?!。このホールは二打地点まではフェアウェイがほぼ平坦なので、飛距離の実力を知るのに適している。そうか、ベン・ホーガン師匠の教えを守ると、ふだんは230ヤードぐらいしか飛ばない私でもこんなに飛ぶのかと喜んだ。とりあえずはね。
しかし、帰宅してよくよく考えるうちに、だんだんとそんなに飛ぶわけないぞ、という気がしてきた。プレー前の約4週間は全くラウンドをせず、歩く機会も少なかったから下半身はむしろ弱っていたはずだ。
そこで、当日のGPSロガーのデータを詳細に点検してみた。ログは5秒間に1回ずつ記録されている。
ショットをするために立ち止まった地点は、少なくとも数個のデータが近くに重なっているので、プレーの記憶とも照合することで、だいたい特定することができる。これで1打地点と2打地点がわかる。
その2地点の距離をGoogle Earthの定規機能で測定した。すると、あのナイス・ショットの飛距離はせいぜい240ヤードだという結論になった。どう頑張っても278にはならない。
この数値にはとてもリアリティがある。実測という説得力がある。でも、ちょっとばかりの悲哀感もある。やっぱりダメなのね。自分の能力の真実を知らないのがアマのアマたる所以である。
ところで、全米プロ選手権に出場した17歳の高校生プロ石川遼くんはギリギリではあるが予選通過をはたした。40歳の藤田選手はもっと上位で通過したが、片山選手や今田選手でさえ落ちたのだから、堂々たる快挙である。USPGAのサイトによると、4大メジャー予選通過の最年少記録は1952年のマスターズでのトミー・ジェイコブズの17歳1ヶ月だったので、遼くんの17歳10ヶ月は及ばない。しかし、このPGAツアー選手権に限れば彼が史上最年少だと特筆している。米国基準でみても快挙なのだ。
ゴルフをするオジサンたちはミネソタ州からの深夜の生中継を観るものだから、ゴルフ場でも朝の挨拶はみんな「いやー寝不足でして」。でもオジサンたちはみんな彼の活躍に目を細めている。よく「彗星のように」現れたというが、この彗星はどんどん地球に接近しますます大きく輝き出しており、ひょっとして今世紀最大の彗星になるのかも知れない。
仮に楽に300ヤードを飛ばす遼くんが御殿場の16番を攻めるとどうなるのだろうね。定規でその球筋を描いてみた。ティー・ショットの方向がまるで違う。しかも、曲がり角の高い木の右側を林越えで行くのでひときわ高い軌道が求められる。ただし、実際のトーナメントでは使うティーがもっと奥になるので、こういうルートで打つことはないだろうが。
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