ニフティの"XCOOL"(エクスクール)というpodcastを聴いていると、「一曲目…では聴いてください」と司会者が言うので、音楽が始まるかと思いきや、音楽はまるごとスキップされて次のお喋りへと平然と進行して行きます。
音楽著作権問題があって、番組送信側が、podcastという方式でその音楽を配信する権利を得ていないからこういうことになるのでしょう。デジタルなので劣化ゼロの完璧コピーができること、かつそのファイルを保存し何度でも再生できるとなると、これは楽曲を販売したに等しい結果になるので、だからその部分はカットされるのでしょうね。
iTunesの音楽ストアが昨日ようやく日本でも開店となりましたが、podcastingの中での音楽利用はいつまでもこの問題を引きずるかも知れません。
しかし、考えてみると、DJが「では○○をお聴きください」と紹介した曲が、もともと自分のiPodの中に入っていたとしましょう。何処かで別の機会に購入した結果としてそこにあったとしましょう。そういう場合でもDJがあるコンテクストの中で紹介した曲がブツッとカットされていいものかどうか。
そのiPodオーナーはその曲を再生する権利は購入して持っているのだから、そのまま再生すればいいに決まっています。
ところが今の著作権管理の方式の中で、こういう問題が解決できません。不特定多数の人にダウンロードさせてよいだろうか?いや、ダメに決まっているでしょ、というところで思考停止しちゃいませんかね。
もしも、個々の楽曲に固有のidが降られていて、podcasterのDJが「では○○をお聴きください」と言った時に、必ずしもその楽曲のデータがそのDJのお喋りデータと同じファイルの中に統合的に存在する必要はないでしょう。
楽曲の生々しい音声データではなくて、その楽曲の固有のidだけをDJのお喋りの中に組み込んでおくという方法が考えられます。
そうすると、mp3プレーヤーのような再生プログラムがそのidの楽曲を、利用者のiPodの中から探すのです。持っているかどうか、と。もし存在したら再生する。その場合は、聴き手には、DJのお喋り→楽曲紹介→楽曲再生…という自然な展開が聴こえます。
もしも当該idの楽曲がデバイスの中に見つからない場合は、やり方は幾つかあるでしょうが、例えば、ただちにミュージックストアに接続して購入を誘うことが考えられます。(そもそもこのような場面で新曲を年間100曲までは5000円で自動購入する、なんていうライセンス契約があってもよい。) さもなければ、あっさりと音楽はスキップして(file not foundということで)DJのお喋りの続きに進んでもよろしい。
要は、podcastとしての音楽番組で厳しい著作権管理を求めるのなら、音楽データを直接配信するのではなくて、むしろ楽曲のidだけを配信し、そのidの楽曲が利用者のデバイスの中に存在する場合だけ再生するという方法があるということです。
なんだか馬鹿馬鹿しいように感じられるかも知れないですが、iPodでのシャッフルという概念のことを考えてみると、これはもともと自分が所有している音楽の数々が思いがけない順番で再生されることに新鮮な面白さがあるわけでしょ。
podcastとして飛び込んで来たDJのお喋りと音楽プログラム編成も、仮に紹介された全曲をiPodの中にもともと持っていたとすると、これはシャッフルの一種に過ぎないでしょう。
自分が持っている曲ばかりだといってそのDJ番組に価値が無いとは言い切れない。知っている音楽、持っている楽曲を、新しいコンテクストの中に並べて聴かせるのがDJの技であり価値でしょう。
podcastingの前に立ちはだかる音楽著作権問題をやや緩和する一つの試案でした。
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