9月20日の土曜日、ゴルフに出かけた軽井沢の夜、イタリア料理のスコルピオーネに繰り出した。タクシーの運転手が言うには「子供は入れないらしいよ」と。我々は年寄りばかり5人だが、要するにちょっと気難しい店らしいですぜ、ということか。
そうなのかも知れないが、我々は食事を存分に楽しませてもらった。
なによりも、メニューの筆頭に上がっていたこともあり何気なく注文したバーニャ・カウダは、興味津々の逸品だった。この正体についてあれこれ考え推理していたので、デジカメに撮るのを忘れてしまったが、通り一遍のレシピではないことは明らかだった。
野菜はすべて湯通ししてあり、パリパリの新鮮生野菜は出さない。それもちょっと珍しいとは思う。だが、なによりも、バーニャ・カウダのソース自体が独特なのだ。
一見してわかるのは、オリーブオイルがソースに浮いていないということ。というより、果たしてオイルが入っているのだろうか?と訝しく思われるほどだ。
口に含むと、ひときわクリーミィで滑らかな食感があり、非常に丁寧に裏漉ししてあることがわかる。
バーニャ・カウダは、ともすると、オリーブオイルの緑色とすりつぶしたニンニクのペーストが相まって、カニミソを思わせる仕上がりになるモノが多い。しかし、ここのは色が肌色のように明るいし、質感もカニミソを更に漉したような感じだ。見た目も味わいもニンニクの気配がほぼ完璧に消えている。ひょっとしてニンニクを使っていないのではないか?!いや、ニンニクの他にも何か入れているのではないか?という感じがしないでもない。
アンチョビ臭はかなり弱め。十分に塩抜きして使っている感じ。感覚的にはアンチョビ・ペーストをほんの微量たらしただけのように感じる。
メニューにバーニャカウダと書いてなかったら、それとは気付かないで食べたかも知れない。
なんか変だなと思って、同席した仲間に、そもそもバーニャカウダはニンニクを牛乳で煮込んで…して…したモノなんだが…と話していると、老オーナーシェフ氏が往年の日活映画の宍戸錠のように「チッチッ」と軽く首を振りつつ絡んでくる。違うと言いたいらしい。
そもそもバーニャカウダは30年以上も前にイタリアから戻ってきた時にメニューにいれたものとのこと。店の客は老齢で歯の具合がよろしくない人も多いので、野菜はやわらかく茹でることにした。ソースも日本人の味覚に合わせる工夫を凝らしたというが、作り方は教えられないという。「キノコが入ってますかね」「生クリームかな」等と探りを入れてもニタッとするだけで答えない。
話を変えて「スコルピオーネ」という店の名前の由来を尋ねたら、これはイタリアの車の名前から取ったという。
食後、デザートワインについて、メニューに載っていないが、アレアティコがあるかどうか、だめもとで若いソムリエに尋ねてみた。10年ほど前に、銀座のトリフジで、濃い果実味の甘さと酸味の絶妙なバランスをそなえたこのワインを味わって以来、色々な店で尋ねてみるのだが、多くのソムリエは首を傾げるばかり。イタリアではごくごくあり触れたアレアティコ種のブドウによるデザートワインだと聞くのにおかしいではないかと思って来た。
スコルピオーネのソムリエ氏もまずは首を傾げたが、ちょっと調べて来ますと奥に下がった。しかし彼は、なんと、一本のビンを持って戻って来たのである!ワインリストに特集として掲載していた日本人が関係しているイタリアのワイナリーの商品の中にあった、というのだ。アレアティコに再会できるとは!私も初めてのことに大いに驚いた。そして、飲んで感激、これぞ長年イメージして来たワインだった。
そのワイナリーだが、確かにワインリストに一枚の特別リストが挿入されていたことは記憶していた。改めてネットで調べてみたが、たぶんこのブリケッラ農園に違いない。ALEATICOのボトルが写っている。ブリケッラのホームページもあるが、こちらの商品リストには載っていない。
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